2018年11月17日土曜日

橄欖(かんらん)の花散りて


しばらく放置していた恩師・藤田恒夫先生の本「橄欖の花散りて」を今頃、拝読した。これは、今年の夏ごろに現第三解剖学教授・牛木先生が送ってくださったものだ。藤田先生が亡くなる前に、秘書の方に口頭で伝えて記録に残していたものだそうだ。私は、毎日の忙しさ、さつばつとした日常ゆえに本を読むゆとりもなく過ごしており、本日ようやく手にとったというわけだ。読み始めるとおもしろくて一気に読み上げた。藤田先生の奥様佐千子さんのエッセイで始まり、藤田先生ご自身の回想録、藤田先生の息子さんである信也先生(長岡赤十字病院神経内科)のあとがきで終わっている、なんともあたたかなご家族の生き生きとした回想録となっていた。いただいた時、なんで、すぐ読まなかったのだろうと悔やまれた。藤田先生をご存知の方で読んでいない方がいたらぜひともおすすめいしたいと思った。藤田先生といえばとにかく厳しい。藤田先生がいらっしゃる日の研究室の廊下の空気のあの張り詰めた感じ、いらっしゃらない日ののんびりとした感じ、なぜにこんなにも違うのか、他の研究室では経験できまい、と思われる経験をした。論文の手直しはこれでもかこれでもかと続き、終わりがない。いつ終わるんだろうと不安に思う、そんな日々も経験した。ストレスでいつも腹痛がした。私はなんともできの悪い大学院生であった。先生がお亡くなりになる少し前、先生とお奥様とお会いしたことがある。あれはミクロスコピアという雑誌の終了記念パーティーだったか、先生にご挨拶に行くとおとなりの奥様に「この方が八木澤先生だよ、大変、優秀な先生なんだ。」と紹介してくださった。これはお世辞だろうと思う。むろん。でもこんな風に紹介してくださったものだから私は嬉しくて涙が出そうになった。2016年2月、先生は脳梗塞でお亡くなりになった。私にとっては突然のことだった。

 

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